1. 新聞記事に出現する学術雑誌タ イトルの傾向：朝日新聞の場合 常磐大学人間科学部 栗山正光 2011 年 5 月 14 日（土） 日本図書館情報学会 2011 年春季研究集会 ＠東京学芸大学

2. 研究の目的と背景 学術雑誌に言及した新聞記事の分析 – 大学図書館にとって有用な知見が得られる のではないか – 新聞記事の内容分析は、さまざまなテーマ について行われている – 学術雑誌に関する記事分析は見当たらない 新聞記事に出現するタイトルに着目 – どういう雑誌がよく取り上げられているか – 雑誌評価の尺度となるか

3. 研究の方法（１） 朝日新聞の記事データベース「聞蔵 II ビ ジュアル」 1985 年から 2006 年までの 22 年間を対象に 学術雑誌のタイトルが含まれる記事を検 索 各年のタイトルごとの記事件数をカウン トし、表計算ソフトのファイルに記録・ 集計

4. 研究の方法（２） 雑誌のタイトル自体はあらかじめわかって いるわけではない 「学術誌」、「科学誌」といったキーワー ドで検索 ヒットした記事を 1 件 1 件手作業で確認し、 記事中に雑誌タイトルがあれば記録 見つかった雑誌タイトルで検索し、別の語 が冠されていれば、今度はそれをキーワー ドとして検索（ある時点まで） 件数を集計

5. 研究方法の限界（１） 雑誌タイトルに冠されるキーワードは、統一 されているわけではない – 「科学 [ 雑 ] 誌」、 「学術 [ 雑 ] 誌」、「学会 [ 雑 ] 誌」、 「専門 [ 雑 ] 誌」、「研究 [ 雑 ] 誌」、「医学 [ 雑 ] 誌」 など – あらゆるキーワードを想定するのは無理 – 「米誌」、「英文誌」、 「情報誌」、「文学誌」 などはノイズが多いと考え、対象外とする キーワードが冠されず、タイトルのみが出現 する例も – 「三十日発行のネイチャー・メディシンに論文が 掲載される」

6. 研究方法の限界（２） 短いタイトルではノイズを取り除けない – ネイチャー、サイエンス、セル タイトル表記のゆれ – ネイチャー、ネーチャー –[ 全 ] 米 [ 国 ] 科学アカデミー紀要、 NAS の紀要 – ニューイングランド医学 [ 雑 ] 誌、ニューイング ランド・ジャーナル・オブ・メディシ ( ス ) ン → 雑誌タイトルを網羅的に検索し切れない – メタデータ付与がないと無理 (?)

9. キーワードに関する考察 雑誌タイトルが出現する可能性に偏り – （高） 学会雑誌 (98%), 科学誌 (95%), 医学誌 (81%), 紀要 (81%) – （低） 専門雑誌 (19%), 医学雑誌 (30%), 学術雑誌 (32%), 専門誌 (42%), 学術誌 (42%), 論文誌 (43%) 同じタイトルが出現する可能性に偏り – （高） 科学誌, 医学誌, 科学雑誌 – （低） 学術雑誌, 論文誌, 専門雑誌 科学誌、医学誌が主要学術雑誌タイトルに冠 するキーワードとして比較的よく用いられる

10. タイトル別出現記事数

12. タイトル別記事数の集計結果 『ネイチャー』、『サイエンス』を筆頭に、 上位には英米の自然科学系有名誌が並ぶ – 人文・社会系はフォーリン・アフェアーズが 10 位 – ネイチャー・グループの雑誌が目立つ 日本の雑誌では、『ニュートン』 (21 件 18 位 ) 、 『植物研究雑誌』 (16 件 26 位タイ ) 、『書陵部 紀要』 (11 件 33 位タイ ) 、『日本物理学会誌』 (10 件 37 位タイ ) など – 『サイアス』 (28 件 12 位 ) 、『国華』 (25 件 16 位 ) 、 『かがくる』 (19 件 21 位タイ ) はほとんどが広告記 事 – 地方版に掲載される郷土研究誌の紹介記事が多い

14. キーワードにより検索された対象記事数とタイ トル出現記事数との間には強い相関（毎年、 60 ～ 70 ％の割合でタイトルが出現）

18. まとめ 朝日新聞の記事中に出現する学術雑誌のタイト ルを調査（ 1985 ～ 2006 年） 「科学誌」、「医学誌」などのキーワードによ る検索結果から手作業でタイトル出現記事を確 認したが、網羅的な検索は極めて困難なことが 判明 – 新たな検索技術あるいはメタデータ付与が必要 キーワードによりタイトル出現率が大きく異な る 出現記事数上位には、『ネイチャー』、『サイ エンス』両誌を筆頭に英米の自然科学系有名雑 誌が並ぶ 1 回しか登場しないタイトルが圧倒的に多い 雑誌評価の指標とするには内容分析も含めたさ らなる研究が必要